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反知性的な作品が好き

 モーターサイクルダイアリーズ」という映画を観た。チェ・ゲバラの青春時代を描いたロードムービーだった。

卒業を目前に控えた大学を休学し、将来のことなんてまるで考えず旅に出て、その途中で何度も迷い傷つき成長していく多感な23歳の等身大のチェ・ゲバラが描かれている。同年代で毎日もやもやした生活を送っている僕は思わず自分を重ねるように観てしまった…なんてことは全くなかった。何故ならこの男が医大生のインテリのエリートだったからだ。そんで顔も良かったからだ。当然童貞なんかじゃないし美人の人妻に色目使われてるシーンもありやがった。女だけじゃない、劇中この男は老若男女、誰からも好感を持たれていた。モテモテだ。そのモテっぷりにふさわしく、困難に直面しても乗り越えていける強さ、誠実に他人と向き合おうとする優しさ、両方とも当然の如く兼ね備えていた。

こんなスーパースターに重ねられる要素など僕には一つもない。

チェゲバラが誇張も虚飾もない等身大の人間になったとしても、それでも22歳無職無能童貞の僕とはあまりにスケールが違いすぎる。

大学休学とか、将来を無視しての放浪とか、そういう自分と共通する要素に惹かれて観てみたけれど、チェゲバラの素晴らしい武勇伝を2時間たっぷり見せつけられただけだった。

 

 

もう言いたい放題言うけど、この映画を観て分かったのは、やっぱり知性的な奴は駄目だってことだ。感情移入できないし、劣等感感じてしまうから駄目。夏目漱石の三四郎は駄目。風立ちぬ堀越二郎も駄目。大友克洋の漫画に出てくる大学生も駄目。げんしけんも駄目だしシガテラも駄目。あいつらはみんな駄目だ。嫌いだ。劣等感感じるのは現実だけで十分だ。

じゃあ何ならいいのかというと、漫画ならいましろたかしが良い。大友克洋の描く大学生から知性を取り除いた感じ。かっこ悪い青春漫画で、初期のいましろたかし以上にグッとくるものはまだ見たことない。福満しげゆき花沢健吾も大好きだけど、一番はいましろたかしだ。

映画だと「SRサイタマノラッパー」が良かった。退屈な地方でうだうだしてる高卒ニートラッパーが主人公。役所で説教されるシーンは最高だった。

あと「狂い咲きサンダーロード」。極右組織への勧誘をしてくる暑苦しいおっさん相手に「お前何言ってんだかさっぱりわかんねーよ!もうちょっと分かりやすい言葉で言ってくれよ!」と主人公がキレるシーンがある。僕がもし根暗で貧弱じゃなかったら、多分今頃こういうこと言うヤンキーになってただろうなと思う。

それからエドガーライトの「ワールズエンド」も良かった。学も教養も未来もない、虚勢だけで何とか生きしのいでる大人になれない中年のおっさんが世界を救う話。情けない中年の話はいくらでも観たい。

そういう反知性的な目で見ると、音楽では神聖かまってちゃんが一番良い。の子は自分で自分のことクレバーだと言っていたけれど、本当にクレバーならもっと売れてたはずだ。の子のそういうあまり賢くないところが大好きだ。清志郎とかヒロトとか、ロックスターは進学校出身が多いけれど、の子はそうじゃない。一歩間違えてたら、中卒ニートで年だけとって、今頃とっくに自殺してたかもしれない男だ。僕は本物のロックスターはの子だけなんじゃないかと今でもたまに思う。

…我ながらめっちゃ視野の狭いことを言っている気がするけれど、しかしロックとかでは意外とそういう要素が重要だったりするんじゃないだろうか。いや俺が劣等感まみれなだけかな…まあ何でもいいや。どうせこの性格一生直らないしな。とにかく僕はもう駄目駄目で頭悪くてダサくて情けない主人公しか見たくないんだ…。

 

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